先にこちらとこちらを読んで下さいね。
コンサートは無事に終了。
でも、南米の観客はしぶといんです。
加えて彼も例の
名曲を歌っていない。
これはアンコールに備えていることが見え見え。
観客は総立ちになってスタンディングオベーション。おもむろにステージに立ちなおした彼は、椅子に腰掛け、アンダルシア製のギターを抱きかかえながら静かに話しはじめました。
「皆さん、テレビをご覧になったと思いますが・・・
私はハリウッドで、ある賞を受賞しました。」
「この受賞の際には歌えませんでしたが
今晩は皆さんの為にこの曲を全部通しで歌います。」
彼が言っているのはもちろん2月に開催された
第77回アカデミー授賞式のこと。
彼は
スペイン語の曲としては初めて
最優秀オリジナルソング賞を受賞したんです。
(左がその受賞作品の収録された
「モーターサイクル・ダイアリーズ」のジャケット。)
でも彼は
「アカデミー賞を受賞した曲」とは言わないんです。
「アカデミー賞」や
「アメリカ」という言葉はついに一回も口にしなかったし
「ハリウッド」は言ったものの、ニュアンス的には「ハリウッドという場所で」という風に話しました。
もちろん受賞そのものは嬉しかったはず。
ウルグアイ国民もそれを誇りに思っているのは間違いないのですが
それをそのままストレートに出すことは難しいんですね。
米国に支配されている音楽業界。
自分の歌を自分の手でパフォーマンスすることを許されなかった
(知名度が低いからというだけの理由で)
彼としては複雑な気持ちを持っていたのでしょう。
俳優であるアントニオ・バンデラスに
自分の曲を歌われてしまったのだから尚更です。
詳細は
こちらを読んで下さい。
その南米的な感情が濃厚に表れた一曲がありました。
アカデミー受賞作の「al tro lado del rio」を歌いおえ
次に彼は何を思ったか
英語の歌を歌い始めたんです。
すると会場は
シーンと静まり返ってしまいました。
私の横にいた60代のオバサマも
「ハリウッドかぶれだわ」と冷たい一言。
「なんで英語の曲なんて歌うのよ~」と
私までヒヤヒヤしながら聞いていたら
途中からスペイン語に切り替わったんです。
すると観客席はものすごい興奮。
「上手いことやったな」
南米において英語は非常に
ウケが悪いんです。
彼らにとって、英語は北米を主張しているからなのでしょう。
敢えて英語で歌い始めて、スペイン語で歌い上げる。
まさに、南米の観客向けの歌でした。
日本で英語の歌を歌ったら「カッコ良い」のに
こちらでは「北米かぶれ」の一言で片付けられてしまうんです。