ウルグアイ映画世界進出でご紹介した「Whisky」
よく探してみたら日本語でも紹介されていました。
第57回カンヌ映画祭レポートとして
実際に現地に行かれた方が書いています。
ところがちょっと残念なことが・・・。
この方、ストーリーを全く間違って解釈しているんです。
映画祭のラストに公開された同作品を観て
「(最後を飾るには)ふさわしい作品ではない。」とまで断言。
ストーリーを理解されていない方に
ここまで言われてしまうとちょっと悲しくなります。
そこで今後この映画をご覧になる方のために
この映画のストーリーをご紹介します。
第57回カンヌ映画祭レポートと読み比べてみてください。
比較がしやすいように文章をちょっとお借りしました。
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Whisky ~あらすじ~ (これが本当のお話)
ウルグアイの首都モンテビデオに住むJacobo(60歳)は
長年にわたって年老いた母親の看病をしてきた。
その母親を去年看取ってからは、一人寂しく生活している。
彼は、従業員3人の小さな靴下工場を経営しているが、
売り上げは芳しくなく、使っている機械も老朽化が目立つようになってきた。
この工場で20年間Jacoboと共に働いてきたのがMarta(48歳)。
彼女はJacoboの片腕のようなもので、仕事以外の面においても
何かとJacoboの身の回りの世話をして彼に尽くしてきた。
彼らはお互いにとってなくてはならない存在だが
Jacoboには変なプライドがあり、わざと彼女に対して冷たく接してしまう。
本当は毎朝彼女に入れてもらう紅茶を何よりも楽しみにしているのに
雇い主と従業員という立場上どうしても素直になれない。
ある日ブラジルに住むJacoboの弟Herman(55歳)から連絡が入る。
母親の matzeivaの儀式を行う為にモンテビデオを訪れるとのこと。
(matzeivaとは死後一年経って墓石をお墓に設置するユダヤ教徒の儀式)
母親のお葬式にも出席しなかったHermanにとって帰郷は20年ぶりとなる。
Hermanは二人の娘と妻と一緒に家族でブラジルに住んでいる。
彼も兄と同様に靴下工場を経営しているが 彼の工場は大変大きく
トレンディーでカラフルな靴下を最新鋭の機械で作っていて羽振りもいい。
小さい頃からHermanは要領が良く兄よりも優秀だった。
目の敵にしていたので20年ぶりの再会も素直に喜べないJacobo。
兄としての意地とも言えるプライドからMartaにとんでもないお願いをする。
それは「夫婦の振り」をしてくれというものだった。
一人寂しく生活している自分の姿を見られたくないという悲しい意地だった。
Martaは驚きながらもこの願いを聞き入れ、
淡い期待と共にJacoboのマンションに移り住む。
Jacoboの両親がしていた結婚指輪をはめて
二人の奇妙な共同生活が始まる。
matzeivaの儀式も無事に終わり
3人はHermanの誘いで国内旅行に出かける。
これまで泊まったことのないような高級ホテルに泊まり
CASINOや室内プールで楽しい時間を過ごす。
Hermanの滞在期間はあっという間に過ぎて彼はブラジルに帰っていく。
後に残された二人は・・・・・
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ね?全然違うでしょう?
Hermanのことを「知人」と書いている時点で
この映画の大切な要素を逃しているんです。
「出張旅行」なんて書いていますがこれは単なる国内旅行。仕事は関係ないです。
「雇い主とベテラン従業員の間の関係にちょっとした変化を期待する気持ちは、
クールに裏切られる」と書いてありますが、ちゃんと最後まで観ていないのでは?
と疑いたくなります。
(上は監督のPablo STOLLとJuan Pablo REBELLA )
次にタイトル「Whisky」について。
「タイトルが想像させるような、アル中や酔っぱらい騒ぎなどは微塵もなく」
なんて日本語の紹介サイトに書いてありますがこれも大間違い。
MartaがJacoboの家に移り住む際に
夫婦らしさを醸し出す為に二人で記念写真を撮るんです。
わざわざフレームも買ってきて居間に飾ろうと決めます。
二人とも久しぶりにめかしこんで、ぎこちなく腕を組んで・・・
その時に写真屋さんが言うのが「Whisky!!」
日本語で言うと「ハイ。チーズ!!」ですね。
その後の国内旅行でも三人で記念写真を撮ります。
そのときも「Whisky」と3人ぎこちなく笑います。
つまりこのタイトルはカメラの前で一瞬だけ見せる作り笑いと同様に
Hermanの前でJacoboとMartaが見せる「擬似夫婦」の様子、
あるいは「仲の良い兄弟」の振りをしている
JacoboとHermanの様子を示唆しているんです。
アル中だなんてもってのほか!!!
評論を書く際にはきっちりとストーリーを理解していただきたいものです。